臼・―ひきりうす・ひきりぎね―

この、臼・杵というものは、もとは古代の人々が火を熾す際に使った道具のことです。
最も原始的な古い形の発火器(現在のマッチやライターのような火をつける道具)であります。
古くからのしきたりを大切にする神社の祭りや神事では、この道具を神聖な神火を鑚り出す
方法として今もなお遺しているのであります。
出雲地方では熊野大社の他に、出雲大社など多くの神社で現在も使われています。

熊野大社で使われているものは、約1m×12p×3pの檜の板(燧臼)に長さ80p、直径2pの卯木の木の丸い棒(燧杵)を
立てて両手で力を入れてもむ方法で火を熾します(錐揉み式)。根気よく続けると摩擦で煙が出始め、やがて発火します。
前のページでも紹介致しましたように、熊野大社では鑚火祭の時にこの燧臼と燧杵を出雲大社の宮司(國造)に授け渡す
亀太夫神事があります。また、燧臼・燧杵は平素、鑚火殿に大切に保管されています。
他の神社には見られないこの施設を備えていることも熊野大社の大きな特徴の1つであります。